SIMON BORG-OLIVIER @YOGA SYNERGY: ヨガの解剖学

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ヨガ(統合という意味)の究極的にめざすところ、それは、自己の意識は万物の意識と一体となっているという、悟りに達することです。それは、とてつもなく高い目標でなかなか到達できるものではありません。比較的短期間でも達成可能な目標としては、ヨガを通じて脳と身体のコミュニケーションを最大限に高めるということが挙げられます。そこで、ヨガの解剖学の視点から、ヨガで達成できること、ヨガの与える効果への理解を深めれば、最も効果的にヨガを実践できるようになります。

脳と身体のコミュニケーション

脳と身体のコミュニケーションが円滑に行われていれば、健康は増進し、活力も向上し、怪我の治癒力も高まります。人間の体内では、エネルギー(プラナ)と情報(シッタ)がその循環回路を巡ることで、主なコミュニケーションが行われています。ハタヨガとは、古代インドのヨガ科学の身体を通して行うヨガの形で、身体を動かすことにより、脳と身体を統合し、そのコミュニケーションの円滑化をはかるものです。

逆伸張反射(弛緩反射)

筋肉をストレッチしていると、適度な伸展域に達したときに、筋肉が弛緩することを、逆伸張反射(弛緩反射)と呼びます。この効果を得るには、通常12~15秒くらいかかりますが、筋肉を伸展状態で2、3秒以上緊張させると、数秒で筋肉はリラックスして緩みます。そのため筋肉を伸展状態で緊張(収縮)させると、筋肉が強化するだけでなく、普通にストレッチするよりかなりの長さまで伸び、続いて弛緩しやすくなります。  たとえば、足を組んだ姿勢での前屈ポーズ(写真1,2)を行うとき、主にストレッチされるのは股関節伸筋(臀部筋)です。このポーズで、逆伸張反射の効果を迅速に得るには、臀部を緊張させるか、または股関節を屈曲させた姿勢のままで伸ばすようにして、股関節伸筋を緊張させるます。胡坐をかく姿勢からの前屈には、足の裏を床に押し付けようにすれば、効果が得られます。

写真1:実践例:股関節伸筋ストレッチー胡坐ポーズからの前屈

写真2:上級レベル股関節伸筋ストレッチーロータスポーズからの前屈バランス

このほか逆伸張反射を利用したポーズに、ランジ、または股関節屈筋のストレッチがあります(写真3)。ランジでは、両足をくっ付けるように、あるいは足裏を床に押しつけるようにすることで、股関節屈筋を伸展し、その伸展した状態で緊張させます。この動きにより逆伸張反射が働き、股関節屈筋をすばやく効果的にストレッチでき、また増強をはかることもできます。さらにストレッチの後、筋肉が容易に弛緩できるようになります。同様の効果を利用したより複雑なポーズには、写真4の「上級レベルランジバランス」があります。

写真3:実践例:股関節屈筋ストレッチー立位ランジポーズ

写真4:上級レベル股関節屈筋ストレッチーディープランジのバランスポーズ

ヨガのバランス

ハタヨガのテクニックを習得すれば、やがて、どの筋肉も自由に緊張(収縮)させたり弛緩させたりできるようになります。年を取るにつれて、人間の身体は、柔軟性を増す代わりに、安定感のなくなる部分もあれば、可動性を失い、硬直してしまう部分も出てきます。ヨガでは、それぞれの筋群をバランスの取れた状態に保つことにより、主要な関節複合体のいずれもが、均等に力を発揮できるようになることを目的としています。

ヨガを行う際には、それぞれの関節複合体の状態により、短縮した筋群や伸展した筋群を、それぞれ収縮させるか弛緩させるか選びながら練習できます。ヨガの熟練者は、以下の4種類の筋肉の収縮と弛緩の状態から、容易に適切なものを取り入れ、関節複合体周囲の力のバランスを保つことができます。

 

状態1:短縮した筋群、伸展した筋群、ともに弛緩した状態。身体的に楽な状態ですが、伸張反射により、伸展した筋肉から抵抗を感じやすく、関節複合体に安定感が加わらない。

筋肉の痙攣などの特別な状態においては、対立筋(主導筋と拮抗筋)をどちらも完全に弛緩状態にし、少しずつ時間をかけて伸展状態を保持していくとよいでしょう。そうすると、伸張反射に逆伸張反射が取って代わるからです。これは、比較的容易で心身ともにリラックスすることができます。

状態2:短縮した筋群が収縮し、伸展した筋群が弛緩した状態。短縮した筋肉が強化し、相反性抑制反射の誘発により、伸展した筋群をより容易に引き伸ばすことができます。

関節複合体の片側に凝りや痛みがある場合は、反対側の拮抗筋群を収縮させることにより、緩和させることができます。痛みや炎症が関節複合体のいずれの側に発生した場合にも、この方法で緩和させることができます。

状態3:伸展した筋群が収縮し、短縮した筋群が弛緩した状態。伸展した筋群を伸ばした状態で強化でき、伸張反射が誘発されるため、伸展した筋群が更に引き伸ばされ、その後、弛緩しやすくなります。また短縮した筋群に相反性抑制反射が誘発され、弛緩を促し、厄介な痛みの原因となる凝りを解消してくれます。

緊張してこわばったり、ひどく凝った筋肉は、関節痛の原因ともなりますが、伸展した状態で意識的に収縮させると、収縮後に筋肉はリラックスして緩みます。さらに筋肉の適当な部分に圧力をかけて伸展を深めると、より効果が高まります。

状態4:短縮した筋群も伸展した筋群も収縮(緊張)した状態。この状態は、関節複合体を安定させ、血行を促し、筋力と柔軟性をともに向上させ、どの筋肉も弛緩してリラックスしやすくなります。

関節複合体に安定感を欠く場合、その関節を囲む対立筋(主導筋と拮抗筋)を同時収縮(同時緊張)させることにより、関節を強化して安定感を増し、周辺の血行を促すことができます。さらにヒーリング効果も向上します。

筆者のサイモン・ボルグ・オリビエとビアンカ・マチリスは、ともに理学療法士であり、ヨガシナジーのディレクター兼シニアインストラクターを務めています。ヨガシナジーでは、伝統的なハタヨガを、運動系理学療法に基づき、現代人や西洋人の身体に適した方法で教えています。

ホームページ: https://yogasynergy.com

2007年10月(2006年12月 Well Being Magazine 107)

Simon Borg-Olivier

ヨガジャヤの生徒たちの声

肉体的に自分の体が変化していき、体も精神的にも安定し、地に足がしっかり付く感覚を感じた。自分の体の詳細な部分や精神的な部分に集中して意識を向ける事ができた。

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