瞑想の技法として地面に横たわる姿勢は、インドのヨガの伝統にとって新しいことではありません。仰向けの姿勢を用いて精神活動に変化をもたらすということが、早くも12世紀に記録として記されており、歴史的証拠として残っています。マインドが消滅するまで屍のように地面に横たわるということが、12世紀のDattātreyayogaśāstraのLayayoga(マインドを消滅するヨガ)のセクションで説明されています(引用:Birch&Hargreaves 2015、11)。このLayayogaのテクニックは、おそらくVijñānabhairavatantraのような初期のタントラに由来しています。Vijñānabhairavatantraでは、マインド(cittalaya)を消滅するための簡単な瞑想テクニックが教えられています。ヨガのポーズとして、Śavāsana(屍のポーズ)は、15世紀のHaṭhapradīpikāで初めて次のように記述されています:
地面の上で死体のように仰向けに横たわることがŚavāsanaである。これは疲労を改善し、マインドの停止を引き起こす。(Haṭhapradīpikā1.34)
現代のヨガでは、Śavāsanaはしばしばリラクゼーションのテクニックとして教えられます。このポーズについて、Swami Kuvalayanandaは説明(1933年、112)の中でこう言っています:
(これは)筋肉の完全な弛緩を必要とし、(中略)生徒は身体の特定の部分を選び、筋肉を徹底的にリラックスする必要がある。それから彼はその部分に集中し、その部分のすべての筋肉組織がさらに弛緩し、まるでそれが崩れていくかのように想像する。
ほとんどのヨガのクラスでは、Śavāsanaは、身体に残ったあらゆる緊張を解放し、疲労を和らげるために一連のアーサナのシークエンスの後に行われます。このようなポーズの中で起こりうる精神的な動揺や不安に対処する方法についての指示やガイドがない場合、練習者は空想にふける、眠りに落ちる、目をぱっちり開けたままそわそわする、体の感覚から解離するというような状態に取り残されるケースが起こりえます。代案として、教師の中には、生徒がŚavāsanaにいるときに身体が浮いている、もしくは身体が重く沈んでいるというように想像させたり、穏やかな状況や色や形を視覚化させたりなど、ビジュアライゼーションテクニックを教える人もいます。
マインドフルネスとリラクゼーションの介入に関する研究では、このような方法を利用したグループは、利用しなかった対象グループと比較して、ストレスを軽減し、ポジティブな気分状態を改善できることが示されています(Jain、Shapiro他 2007)。しかし、マインドフル瞑想とリラクゼーション・テクニックの違いは何でしょうか。方法が異なる場合、そこから得られる効果は異なるのでしょうか。結果に違いがあるのであれば、両方とも一緒に練習されるべきでしょうか。もしそうなら、どのようにして?
Jain、Shapiroらの論文(2007)は興味深い発見をもたらしました。研究者は、マインドフルネス瞑想と身体のリラクゼーショントレーニングを比較し、調査に参加した人たちの心理的苦痛、マインドのポジティブ状態、気を散らせたり考え込ませたりするような思考と行動、さらに精神的な体験の変化を測定しました。マインドフルネスとリラクゼーショントレーニングの両方が苦痛を軽減し、ポジティブな気分を高めたが、気を散らせたり考え込ませたりするような思考を軽減するという点では、マインドフルネスがより効果的でした。研究者が注目したように、ストレスを軽減するという点において、マインドフルネスは類をみない働きを持っています。
マインドフルネスが、気を散らせたり考え込ませたりするような思考のサイクルをどのようにして断ち切ることができるのかを知ることは、人生のスキルとヨガの練習に重要な側面を加えます。しかし、マインドフルネスが考えにふける状態を減らすという有効性があるとは言っても、リラクゼーションのテクニックを放棄すべきであるということを意味するものではありません。実際、身体の安らかさを実体的な記憶として持つということは、手に入れやすいことでもあり、ペースが速いライフスタイルに対する健康的な解毒剤となり、瞑想的な集中を学ぶための基礎を形成することができます。
ほとんどの人にとって、集中と専念は、交感神経系(ストレス反応)が優位にある場合にのみ可能です。瞑想的状態の特筆すべき効果の1つは、それが注意深さを備えながらも心地の良い感覚を養うということです。通常は矛盾しているこれらの2つの体現化された性質の融合は、多くの人々に変革の意識を体験させるものとなります。身体が柔らかで、マインドが安定している状態の休息時間は、しっかりとした意図と定期的な練習を通して上手に培っていくことが可能です。そうすることで、毎日の瞬間瞬間において深い安らかな感覚を得ることができるのです。安らかさのしるしは、気を散らすことなく、しっかり安定した注意力を保つことができるという形で現れます。
リラクゼーション効果以外にも、マインドフルネス瞑想は、思考の性質をよりはっきり理解させてくれる特定のスキルに磨きをかけます。特定のテクニックを通して、思考は次のように識別されます:
- 本質的に発泡する泡のようなもので、干渉が無くても湧き上がっては消える
- 事実ではない(すなわち、思考は真実や、現実に対する正確な説明ではなく、むしろ主観的な見解である)
- 気分に左右される(すなわち、思考の種類と性質が、その時の個人の気質と密接に結びついている)
実際に、マインドフルネスを取り入れる能力を培うことで、うつ病の再発を防ぐ抗うつ薬ぐらいに効果的であると証明されており(Williams&Kuyken、2012)、苦悩を与えるような思考、感情、行動衝動に対して異なる関係性をもたらし、(Vøllestad、Nielsen&Nielsen、2012)不安を軽減することができます。
ヨガジャヤで開催されるワークショップ「適した休止」で、ジャクリーン・ハーグリーヴスは、ゆったりとして受容的な状態を誘発するテクニックを紹介します。参加者は、仰向けのポーズや動きのあるポーズ、座りポーズをとりながら、安らかなポーズを瞑想的なものにする技術を実践します。また、思考のネガティブなサイクルを断ち切り、注意力を向上させることによって気分を高め、より深い瞑想と精神的な明晰さを増進することによって選択の自由をもたらす方法も見つけることでしょう。
References:
Birch, J. and Hargreaves, J. 2015. “YOGANIDRĀ: An Understanding of the History and Context”. The Luminescent. Retrieved from: Accessed on: April 10, 2018.
Haṭhapradīpikā 1.34 uttānaṃ śavavad bhūmau śayanaṃ tac chavāsanam | śavāsanaṃ śrāntiharaṃ cittaviśrāntikārakam ||
Jain, S., Shapiro, S.L., Swanick, S. et al. 2007. “A randomized controlled trial of mindfulness meditation versus relaxation training: Effects on distress, positive states of mind, rumination, and distraction.” In Annuals of Behavioural Medicine 33: 11-21. Retrieved from: Accessed on: April 2, 2018.
Kuvalayananda, Swami. 1933. Āsanas. Bombay, India: Kaivalyadhāma Lonavla.
Vøllestad, J., Nielsen, M.B. and Nielsen G.H.. 2012. “Mindfulness- and acceptance-based interventions for anxiety disorders: a systematic review and meta-analysis.” In the British Journal of Clinical Psychology 51 (3): 239-60. doi: 10.1111/j.2044-8260.2011.02024.x.
Williams, J.M. and Kuyken, W.. 2012. “Mindfulness-based cognitive therapy: a promising new approach to preventing depressive relapse.” In the British Journal of Clinical Psychology 200 (5): 359-60. doi: 10.1192/bjp.bp.111.104745.
Photo credit: Yoganidrāsana- Light on Yoga, B.K.S. Iyengar, p. 306 (1979 Ed.)